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 私はいま、室内という私的な空間から都市を見るということに関心がある。それは、部屋にいながらテレビやインターネットを通じて都市を覗き見るという意味ではない。室内に置かれた家具や調度品、人と物の摩擦から生じる空間の質感、痕跡と匂い、それらに都市が照射される二重の風景を想像する。言うなれば、生活感のあるカメラオブスクラのようなものを仮想しているのかもしれない。RAMでは今福龍太さんのプロジェクトを通じて安部公房(1924-1993)との共-接触を試みた。戦後日本の急激な都市化と農村的なものへのノスタルジーとの衝突を目の当たりにした安部は、都市の中で未知なる他者への通路を探ることを自身のテーマとし、地域性に依拠しない同時代的な文学を目指した。1960年代に上梓された、失踪によって回復する人間を描いた三部作(『砂の女』、『他人の顔』、『燃えつきた地図』)は、彼の実践が結晶化した作品と言えるだろう。そんな安部公房の眼差しをレンズとし、現在の都市を映し出してみようと思う。

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