室内写真―Camera Simulacra―
2020.9.19sat-22tue, 26sat-27sun(6days)|Marginal Studio, AWOBA SOH
Marginal Studioでは、2020年9月19日から27日まで、三田村光土里、綾野文麿、間庭裕基による展覧会『室内写真―Camera Simulacra―』を開催いたします。
カメラのルーツはラテン語で「暗い部屋」を意味する光学装置カメラ・オブスクラにあります。一点の穴を通して映像となった風景が、上下左右反転した状態で内部に投影され、それを化学作用で定着したものが写真です。『室内写真―Camera Simulacra(カメラ・シミュラクラ)―』とは、今日の写真を観測するために設置された架空のカメラ・オブスクラです。人の手を離れ拡張し続ける現在の写真現象をカメラ・シミュラクラに通過させることで、写真の実在性を担保する定着という行為とその欲望が生み出す幻影について再考します。
現代は、スマートフォンとSNSの普及によりかつてないほど写真が撮影され、拡散され、閲覧されています。意識的に距離を置かない限り、日々の生活の中で写真を見ない日はないでしょう。インターネットを介し、デジタル空間の中で流通する写真は、画像検索、タグ付、認証システムなどの機能により、常に他の写真、そして他のメディアと接続された状態にあります。そのようにネットワーク化した今日のデジタル写真は、もはやアナログの代替などではなく、煌々と輝く明るい部屋の中で独自のシステムを築いています。写真のネットワーク化は、私たちが写真を見る際の時間感覚にも変化をもたらしています。従来の写真は、ロラン・バルトが「それはかつてあった」(*1)と定義したように、形見として認識されていました。いまでも紙に焼かれた物質としての写真にはそのようなまなざしが向けられるかもしれません。一方、今日私たちが眼にしているディスプレイの中で漂うデジタル写真は、「それはかつてあった」を背景化し「いまここ」にあるものとして私たちの経験を促します。この現状をジョセ・ヴァン・ダイクは「メメントからモメントへ」(*2)と秀逸に表現しています。
本展の会場は二つに分かれています。会場1Marginal Studio/文華連邦では、綾野が美術史の文脈におけるフレーミングとメタファーとしての窓を参照した作品群で構成したインスタレーションを立ち上げ、会場2あをば荘では、三田村が自身の家族写真を用いた映像作品《Inventions》を上映、両者をつなぐ役割として間庭の組作品が各会場に設置されています。また、特設サイトhttps://camerasimulacra.com/では、作家三名が『室内写真―Camera Simulacra―』について日記的な投稿を行います。実際の展示空間と接続しつつも、それとは異なるアプローチが見られるでしょう。
出典
*1 ロラン・バルト(1985)『明るい部屋』みすず書房
*2 前川修(2019)『イメージを逆撫でする―写真論講義 理論編』東京大学出版会
◆展覧会概要
会 期:2020年9月19日(土)、20日(日)、21日(月・祝)、22日(火・祝)、26日(土)、27日(日)
時 間:14:00~20:00 作 家:三田村光土里、綾野文麿、間庭裕基
会 場:Marginal Studio(〒131-0044 東京都墨田区文花1丁目12-10文華連邦)
あをば荘(〒131-0044 東京都墨田区文花1丁目12-12)
web:https://camerasimulacra.com/
入場料:500円(学生200円)
*2会場共通のフリーパス制 *チケットは文華連邦内Marginal Studioでお買い求めください
Installation view
◆配信トークイベント
ゲストに深川雅文氏をお招きし、出展作家と共に『室内写真―Camera Simulacra―』について話し合います。
配信日時:2020年9月23日
深川 雅文(ふかがわ まさふみ)
キュレーター/ クリティック
1958年佐賀市生まれ。展覧会企画とともに新聞・雑誌・ウェブ等での評論執筆活動を行う。川崎市市民ミュージアム在籍後、2017年よりフリー。バウハウス開校100年(2019)記念巡回展「きたれ、バウハウス」の企画監修。国際美術評論家連盟日本支部(AICA Japan)会員。著書『光のプロジェクト 写真、モダニズムを超えて』( 青弓社, 2007 )訳書『写真の哲学のために』(ヴィレム・フルッサー著 勁草書房, 1999 )共著『現代写真アート原論「コンテンポラリーアートとしての写真」の進化形へ』( フィルムアート社, 2019 )など。 https://www.mfukagawa.com/
◆出展作家
三田村 光土里(みたむら みどり)
1964年愛知県生まれ。2005年度 文化庁新進芸術家海外研修員(フィンランド)。 主な展覧会に個展 「Green on the mountain」 (ウィーン分離派館 Secession, 2006)、「Art & Breakfast Las Palmas de Gran Canaria」(Atlantic Centre of Modrern Art, スペイン, 2017) 、あいちトリエンナーレ2016、 他、国内外での発表多数。 https://www.midorimitamura.com/
綾野 文麿(あやの ふみまろ)
1992年福岡県生まれ。東京藝術大学美術研究科グローバルアートプラクティス専攻に在学中。TOKYO FRONTLINE PHOTO AWARD 2017にて千葉雅也賞を受賞。同時開催中の展覧会「EX/ON」(dragged out studio, 2020/9/25~30)。
間庭 裕基(まにわ ゆうき)
1988年神戸生まれ。2012年立教大学現代心理学部卒業。2018年美学校修了。主な展覧会に個展「STRANGER」(Marginal Studio, 東京, 2019)、「Don't Cry TOKYO」(space dike, 東京, 2019)、「SURVIBIA!!」(デジタルハリウッド大学八王子制作スタジオ, 東京, 2018)などがある。 https://www.yukimaniwa.com/
◆トークのキーワード
・カメラオブスクラ
・ヴァナキュラーフォト
・廃墟写真 ・ファンドフォト
・ヴォルフガング・ティルマンス
・ベッヒャー夫妻 ・路上観察学
・ニューカラー ・ジェフ・ウォール
・折元立身
・ハイレッド・センター
・横田大輔
・写真ゲーム
・ジョセ・ヴァン
・ダイク”メメントからモメントへ”
・テクノ画像
・essay「痕跡としてのX」〈二人〉論 https://www.mfukagawa.com/post/essay_...
・港千尋 インフラグラム
・プラトン 虚像
・バーチャルの語源”ヴィルトゥス(=力)”
・ニセフォール・ニエプス「ル・グラ自宅窓からの眺め」