here and there

2020

​gelatin silver print, サイズ可変

2020.09.19~27  文華連邦/Marginal Studio『室内写真―Camera Simulacra―

 

 写真と窓の関係は深い。初めて画像の定着に成功したニエプスの「ル・グラの自宅窓からの眺め」はさる事ながら、窓のフレーミングがもたらす写真的状況と、そこにカメラを向ける事で生じる二重構造は多くの写真家を惹きつけてきた。カメラが部屋にレンズが窓に置換え可能なことから、ピンホールルームをつくり撮影する者もいる。

 原始の窓は、出入り口、展望、採光、換気を兼ねた一つの穴であったそうだ。後に穴が出入り口として独立し、他の機能と切り離され窓が誕生した。現在の窓と同様の形は近代以降のガラス技術の発展に伴い完成した。19世紀前半に生まれた写真もまた窓をいくつも持っており、肉眼で見る、ファインダー越しに見る、カメラが見る、カメラが写した写真を見る、という時間を隔てた幾重もの視覚経験をもたらす装置として機能している。しかし、今日のデジタル写真における窓事情は従来のそれとは異なるようだ。ディスプレイと一体となったカメラはシャッターを切る前から完成画像を示し、そこで撮影された写真は瞬く間にインターネットで共有され、同時多発的に現前する。それらすべての作業と視覚経験が現在のものとして1枚のガラス越しに完結する様は原始の窓によく似ている。

 今作は、デジタル写真がもたらす視覚経験を光学的作用として再構成した組作品である。原始の窓を手がかりに、窓ではなく扉をレンズにピンホールルームをつくり、部屋で部屋を撮るその構造を撮影した。1枚はピンホールが生み出した自然の映像を、もう1枚はピンホールの穴の位置からデジタル撮影した映像を扉にプロジェクションした。ネットワーク化された写真において異なる空間と時間を有するものが平地に置かれるように、この2枚の写真に写る扉に結ばれた映像もまた観者の前では同等の幻として振る舞うだろう。

© Yuki Maniwa